2022年2月24日 - ロシアは突如、
ウクライナへの侵攻を開始。
その時、MISECの社内に緊張が走りました。
ロシアは主要な石炭産出国であり、たくさんのお客様に供給していたため、輸入への影響が懸念されたからです。案の定、同年5月に日本政府がロシアからの資源調達を禁止すると、産業界は、激しく動揺しました。
ロシアは日本海を隔てた隣国であり、オーストラリアや東南アジア、あるいはアフリカや南米といった他の産地に比べ、日本に近いため物流面で大きなメリットがありました。遠方から輸送する場合、効率のために大量輸送する必要がありますが、大型の石炭専門船が入港できる港は限られています。ロシアは積出港の距離が近いので、小型の船で国内のさまざまな港へ、柔軟な配送が可能。わが国の企業にとって、使い勝手のよい資源だったのです。
2022年当時、ロシア産石炭は、当社の取引の半分弱を占めていました。
全面禁輸は、お客様にとっても、私たちにとっても、存続の危機に直結する問題。
手をこまねいているわけにはいきません。
窮地に陥ったからこそ生み出せた、
逆転の発想。
新たな物流システムで
「物流を再構築」することに成功。
危機感のなかで開発したのが、経由地を使った「小口配送」の物流システムでした。
オーストラリアや南アフリカといった遠隔地から石炭を調達し、大型船で輸送します。しかし、行き先は日本ではありません。中国や韓国に設けた在庫拠点にいったん配送し、小型船に積み替えて、日本のさまざまな港へ運ぶ新しい物流システムを開発したのです。
親会社である三井物産株式会社が、長い期間にわたって中国や韓国の港と良好な関係を構築されていたことを活用させてもらいました。
そしてこの施策は、ロシアからの輸入の代替に留まりませんでした。品質、コスト、量をよりきめ細かく、個別のニーズに応じて、物流を再構築するきっかけとなったのです。
これまで以上にお客様の信頼を得たことで、ロシア産石炭に頼らず事業を継続できただけでなく、お客様の抱える課題を解決することに繋がりました。
逆境を乗り越えることができた「3つの要因」
今では、他社でも同様のシステムに取り組んでいる先もありますが、業界の常識を覆す転換を当時の当社が実現できた理由には、以下の3つの要因があります。
-
当社の強みである三井物産株式会社と住友商事株式会社の信用と広範なネットワークを活用できたこと
-
石炭の専門商社として約30年にわたる長い歴史の中で、良い面も悪い面も含めて多様な経験を積み、お客様との強い信頼関係を構築してきたこと
-
何よりもお客様を大切にし、資源や物流のそれぞれに真摯に向き合う課題解決志向の人材が揃っていたこと
商社の要は「人」であり、人を育てるのは「上司」であり「仲間」です。そして当社経営陣は「インテグリティを大切にするカルチャー」を職場に提供することが最も重要と考えています。不透明性や不安定性が高まる現代において、今後同様の危機が訪れても、当社は必ず乗り越えられる基盤を持っています。